Other
秘める想い
ラハの中の英雄への気持ちを溜めていた器が決壊してしまう瞬間の超短文メモ。
英雄が他の相手にキスされてる描写あります。
それはまるで暴力のように乱暴で無遠慮に俺の目を襲った。
喉がひりつくような感覚が奔る。
形容し難い緊張に全身を支配され、物陰に隠れるオレはただ立ち竦むことしか出来なかった。

しなやかに英雄の首に絡みつくその細い腕はまるで蛇のように思え、己の胸に不穏な黒い火を湧き立つたせるのを感じた。
今立っている位置からは二人の表情は窺えない。ただその相手が彼に何をしているのかは火を見るより明らかで、ぎこちなくも情熱的に彼を引き寄せているのだけがやけに目についた。

英雄は手を触れず、相手のさせるままにしていたようだが、引き寄せられ体勢が崩れるのと同時に反射的に相手を支えるためその腰と背に手を添える。
その光景ははたから見ると、恋人達が睦み合っているかのようでーー
感じていた胸の痛みが、火に焚べた薪のように乾いた音を立てた。
心臓が痛いくらいに高鳴り、全身の血も激しく騒いでいるのに頭はなぜかとても冷めているような・・・そんな不思議な感覚だった。

それは一瞬の出来事だったかもしれない、だがオレには時が止まったかのように長く感じた。
目を覆いたいはずなのに、いっそ逃げ出してしまいたいのに・・・金縛りにあったかのように体が硬直し、そこから目が離せない。
同時に、何故かとても悲しくて・・・今にも泣きたい気持ちが込み上げてきた。

その理由に思いを巡らせ、自分自身が抱く気持ちに・・・望みに気付いた瞬間、オレの身体の硬直は突如として解け、脱兎の如くその場から走り去ってしまった。
秘める想い
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